微生物が合成するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は環境低負荷型の生分解性プラスチックとして注目されている。本研究では微生物ゲノム情報を基盤として、物性の優れた共重合PHAを効率生産する微生物を分子育種することを目指す。 PHA生産菌Ralstonia eutropha H16株(野生株)の染色体に導入するAeromona caviae由来PHAシンターゼ遺伝子を中長鎖基質に対する取り込み能が高いと推定される二重変異体(N149S、D171G)をコードする遺伝子としたところ、高いPHA生産性を維持しつつ、3HHx分率が向上したP(3HB-co-3HHx)共重合体を生合成した。またR.eutropha H16株はグルコース資化能を示さないが、グルコース資化性を示す変異株が知られている。この変異株の解析を行ったところ、推定GlcNAc特異的PTSシステムをコードするnagFE中のnagE、およびnagFEを含むnagオペロンの推定転写制御遺伝子に変異が見いだされた。変異型nagFEの導入により、H16株がグルコース資化性を獲得することを確認した。 キャピラリー電気泳動-質量分析(CE-MS)によりPHA代謝に重要なアシル-CoAチオエステルが各種アニオン性代謝物と共に分離同定できることを確認した。またR.eutropha菌体から調整した代謝物抽出液のCE-MS測定によって、代謝状態の評価が可能であった。その一方で、サンプル調整法の確立が重要であることが示された。今年度は種々の培養条件における代謝物濃度の変化を精密測定するため、^<13>C安定同位体で標識した代謝物抽出液を内部標準とすることによる相対定量法の確立を行った。
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