微生物が合成するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は環境低負荷型の生分解性プラスチックとして注目されている。本研究では微生物ゲノム情報を基盤として、物性の優れた共重合PHAを効率生産する微生物を分子育種することを目指す。 PHA生産菌Ralstonia eutropha H16株(野生株)の染色体に導入するAeromona caviae由来PHAシンターゼ遺伝子を中長鎖基質に対する取り込み能が高いと推定される二重変異酵素をコードする遺伝子とし、さらにβ-ケトチオラーゼ遺伝子の置換や欠失、(R)-エノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子の導入によって、3HHx分率が7~10mol%の軟質バイオプラスチックを植物油から効率良く蓄積する組換え微生物を確立した。またR. eutrophaゲノムより、新規な(R)-エノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子を多数見出し、その一部について組換え型酵素の解析、およびPHA組成制御への利用を行った。 一方、キャピラリー電気泳動-質量分析(CE-MS)を用い、^<13>C安定同位体で標識した代謝物抽出液を内部標準とした細胞内代謝物の精密相対定量法を確立した。R. eutropha細胞について本法による解析を行ったところ、増殖やPHA蓄積の状態による代謝物の細胞内濃度変化や細胞内の代謝物プールを検出した。これら知見はPHA生合成を目的とした代謝改変戦略の策定に有用である。また代謝中間体への^<13>C取り込み速度の測定によるターンオーバー解析について測定手法の確立を試みた。
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