Helicobacter pylari (H.pylori)は、大きさ1.0〜4.0μmのグラム陰性らせん状菌で、ヒトの胃内に特異的に生息し、慢性胃炎、胃がん、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫など多様な疾患に関与している。一方、Helicobacter heilmannii (H. heilmannii)は大きさ4〜10μm、最大14本の単極、または双極の鞭毛を持ち、慢性胃炎や胃MALTリンパ腫に関与している。本研究は、ヒト胃内に生息する2種類のHelicobacter属の病原性を明らかにするとともに、H.heilmanniiのゲノムを解析し、病原性遺伝子を明らかにすることを目的とした。H.heilmanniiの病態を検討したところ、感染4週後から胃にリンパ濾胞が形成され、徐々にサイズの増大、数の増加が認められた。さらに、H.heilmannii感染におけるMALTリンパ腫形成メカニズムは、H.pyloriですでに報告されているリンパ種形成と近似のメカニズムである可能性が明らかになった。H.heilmannii感染マウスから精製したゲノムについてゲノムシークエンサー20によるメタゲノム解析を実施した結果、マウス由来のゲノムの混入はほとんどないことが確認され、BLAST解析によるGC%の分布からHelicobacter属の遺伝子は35-45%の範囲である可能性が示された。これは、腸内細菌由来のゲノムの混入によるものだと考えられる。また、Helicobacter属の遺伝子との相同性を検討したところ、HvirB10と80%の相同性を持った遺伝子が同定され、3.4kbpまで塩基配列を決定した。現在、H.heilmanniiをより効率よく分離する新たな方法を見出し、H.heilmanniiゲノムについてメタゲノム解析を実施している。
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