H.pylori感染における宿主応答の解析として、H.pylori株のゲノム解析を無作為に選んだ8個の構造遺伝子について塩基配列を検討したところ、世界の地域による差及び病態による差は認められなかった。一方、病原因子であるCagAや細胞空胞化毒素遺伝子vacAは、世界の地域により大きく異なった。特に、慢性萎縮性胃炎と胃癌の発症が高い、日本、韓国、中国と欧米との違いが認められた。塩基配列による樹系図では、欧米と東アジアとは異なったbranchに位置し、H.pyloriの起源が異なると考えられた。H.pyloriの病態解析においては、cagAトランスジェニックマウスを作製し、生後12週に胃・小腸粘膜に過形成が生じ、生後72週には8.3%に胃・小腸に過形成ポリープ、1.8%に胃・小腸癌が発症することを明らかにした。H.heilmanniiの病態解析においては、6週令のC57B6マウスを用いて感染実験を行った。感染4週後から胃にリンパ濾胞が形成され、徐々にサイズの増大、数の増加が認められた。胃粘膜切片の病理学的解析では、リンパ濾胞を形成する細胞の多くは小型リンパ球であり、濾胞は胚中心、辺縁帯、マントル層などの通常のリンパ濾胞と同様の構造を有していることを明らかにした。今後、これらの胃内に生息する2種類のヘリコバクター属細菌がどのようにして異なる疾患を誘導するのかを詳細に検討する予定である。
|