研究概要 |
(1) 種々の病原細菌からのレトロンの単離・同定 Vibrio cholerae non-O1, non-O139株であるN-11a株およびコレラ菌の類縁菌であるV.mimicus CS18株より新たなレトロンを単離し,解析を行った。V.cholerae N-11a株のレトロン-Vc154とV.mimicus CS30株のレトロン-Vm129由来のmsDNA-Vc154とmsDNA-Vm129は,いずれもDNA部分に複数のステム・ループ構造を持つ新たなタイプのmsDNAであった。これらのmsDNAは,病原性など細菌の生体調節機構に関与するアプタマーなどの機能を有していると推測された。 (2) コレラ菌におけるレトロンとゲノム多様性との関係 V. cholerae non-O1, non-O139株であるN-1b株は,O1, O139株が保有するレトロン-Vc95とは異なるレトロン-Vc81を保有していた。ゲノム上での挿入部位を調べたところ,レトロン-Vc81はレトロン-Vc95とまったく同じ部位に置換して挿入されていることが明らかになった。さらに,データベースにゲノム配列が登録されているV.cholerae V52株にも同じ領域に別のレトロン-Vc137が存在していることを発見した。以上の結果よりV.choleraeのレトロン挿入部位はゲノムの多様性をもたらしていると考えられた。 (3) 薬剤耐性菌における薬剤耐性遺伝子を含む可動性遺伝因子の解析 エジプトの家畜由来の細菌,魚の養殖場の環境由来菌,パレスチナの入院患者由来の臨床株,アフリカからの輸入動物由来株など数多くの薬剤耐性菌を解析し,新たな薬剤耐性遺伝子を含む種々の耐性遺伝子を検出し,解析した。それらの遺伝子の多くがインテグロンなどの可動性遺伝因子に含まれていた。
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