主に候補遺伝子アプローチから、高血圧に感受性を示す遺伝子の探索・同定を行った。300種の候補遺伝子をスクリーニングしたところ、高血圧と強く関連する遺伝子Aを同定した。遺伝子Aと高血圧との関連は、年齢、性、BMIを調整後オッズ比で1.30(1.13-1.48)であり、アレルあたり収縮期血圧で1.5mmHg、拡張期血圧で0.75mmHgの上昇と相関した。この遺伝子について、英国を中心とする疾患感受性遺伝子解析コンソーシアム(Grobal BPgen)と共同で、Caucasianにおける高血圧感受性を検討した。その結果、高血圧に対する調整済みオッズ比は1.13(1.05-1.21)、p=5.9*10-4であり、Caucasianにおいても当該SNPは高血圧と関連することが明らかとなった。我が国では、ミレニアム・プロジェクトにおいて世界に先駆けてGWASに取り組み、その成果をベースとした本研究において高血圧感受性遺伝子を同定した。しかし、最近の遺伝子解析技術の進歩は当時の技術を遙かに凌駕しており、より網羅的な遺伝子解析からは更なる感受性遺伝子が同定されることが強く期待される。今後、より網羅的かつ大規模な遺伝子解析を進めることで高血圧をはじめとする多因子疾患の遺伝的背景を明らかにし、予防/臨床医学的にはハイリスク者の同定や疾患の層別化、医科学研究的には病態理解の深化と治療・創薬ターゲットの導出を進めていくことが必要であろう。
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