研究課題
M.pneumoniae M129株の全遺伝子ORF産物の網羅的局在観察は689個のうち633個(92%)について終了した。大部分のORF産物は蛍光タグ(EYFP)をN末端に連結した形で局在観察をおこなった。このうち蛍光顕微鏡でEYFPの蛍光が観察されたのは494個(72%)で、残り195個(28%)は蛍光が観察されなかった。蛍光が観察されたもののうち、43%は蛍光シグナルが細胞内各所にほぼ局在して観察された。また23%は細胞全体に蛍光が広がって観察された。残りの34%は蛍光シグナルの局在と拡散が混在していて不規則な像を示した。これらの中から、蛍光の局在パターンの再現性がよく、詳しい解析対象にするものを58個選び出した。このうち9個は、以前から接着器官の構成成分と考えられてきたタンパク質だった。それ以外は、10個が核酸・タンパク質合成にかかわるタンパク質、20個は各種酵素タンパク質のホモログ、2個は分子シャペロン、15個は機能未知のタンパク質だった。これらのORF産物について電子顕微鏡による高解像度な局在分析を行った。電顕での局在観察は、EYFPタグを金コロイド抗体で標識し、免疫電顕法で行った。0.1%のTriton X-100でおだやかにM.pneumoniaeを処理することで細胞内を露出させ、細胞骨格構造に局在するORF産物に金コロイド抗体がアクセスできるようにした。この観察で機能未知のタンパク質の中から1つ、細胞骨格構造のRod部分に明らかに局在して観察されるものが見つかった。また、電顕を用いて細胞骨格関連分子の形態を観察する試みは、P1アドヘシンタンパクとP90タンパク質の複合体を対象にして行った。精製したP1-P90タンパク質複合体をロータリーシャドウイング法で観察した結果、これらのタンパク質複合体は直径約20nmの球状の分子として観察された。
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