20年度は、一連のL型グルコース誘導体の出発物質であるL-glucosamine、および2-NBDLGを始めとする各種L型グルコース誘導体合成法に関する論文発表、特許申請を行った。またD型グルコース誘導体2-NBDGの高純度精製物は共同研究企業より製品供給が開始された。L型グルコース誘導体2-NBDLGについては、高速液体クロマトグラフィーにより不純物が検出限界以下となるまで精製を繰り返し、高純度精製品のNMRスペクトルは高純度2-NBDGのそれと完全に一致し、絶対値が同じで符号が反対の旋光度が得られた。 L型グルコース誘導体の神経系への投与に先立ち、大型で均質な細胞であるマウス受精卵による基本測定を行った。リアルタイムレーザー共焦点顕微鏡観察により、同一受精卵中の膜状態の良い割球はD型のみを取り込んだが、状態の悪い割球はD型のみならず、L型グルコース誘導体をも取り込んだ。また蛍光強度の時間的変化を追跡することで、蛍光グルコースの細胞膜面、膜中などへの非特異的吸着の程度、退色の度合い、細胞内での代謝による分解の速度など、これまでD型のみでは不明であった貴重なデータを、L型との比較により得ることができた。 次いで急性単離した中脳黒質網様部GABA作動性神経細胞やマウス大脳皮質から調製した初代培養アストロサイトに投与し、37度にて投与前後の蛍光強度の差を、D型グルコース誘導体2-NBDGによる蛍光強度の差と比較し、基礎的データを取得した。神経活動に依存したグルコース取りこみについて調べる場合には、細胞の活動状態をパッチクランプ法により同時に計測することが求められるが、高速に動く3次元リアルタイム共焦点顕微鏡の振動により、観察中などにパッチピペットのシール状態が悪化する問題が生じた。顕微鏡ステージを新たに作成し、また種々のマニピュレーターを試し、改良を加えるなど改善を急いでいる。
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