研究概要 |
本研究の目的は、認知症における認知機能障害発現に関与する脳内生物学的基盤を明らかにすることにある。本目的を達成するため、[^<11>C]BF-227-PETを用いたアミロイドイメージング、シナプス活性を反映したエネルギー代謝のイメージング(FDG-PET)、MRIによる灰白質容積の計測、脳脊髄液バイオマーカー、神経心理機能等を多面的かつ縦断的に解析した。健常高齢者に比べてアルツハイマー病(AD)患者では、大脳皮質の広範な領域で[^<11>C]BF-227の高集積が認められ、海馬傍回を中心とした灰白質容積の減少、脳脊髄液タウ蛋白濃度の上昇、アミロイドβ蛋白濃度の低下も併せて観察された。軽度認知障害(MCI)の症例では、健常高齢者と同レベルのBF-227集積を示す症例、AD患者と同レベルのBFー227集積を示す症例、その中間レベルの症例が混在した。FDG-PETではMCI症例では後部帯状回における糖代謝低下が約半数の症例で観察され、AD患者では後部帯状回に加えて側頭頭頂領域における代謝低下が顕在化した。BF-227集積とFDG集積は側頭頭頂領域において弱いながらも有意な相関を示した。MCI患者を検査後2年以上追跡評価したところ、ADへの進行例(converter, 46%)と非進行例(non-converter, 54%)に分類された。MCIconverterは全例で[^<11>C]BF-227高集積を示し、集積変化を示さないnon-converterと明瞭に区別することができたが、FDG-PETでは両群の画像所見にオーバーラップを認めた。以上の結果から、[^<11>C]BF-227の集積で反映される老人斑の沈着は、FDG-PETで反映されるシナプス活性の変化や神経細胞脱落よりも先行し、MCI症例で認められる早期佃病変の検出に有用であることが示唆された。
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