研究課題
ニオイ受容細胞から嗅球までの嗅覚情報処理については、高次脳機能研究における視覚系の研究に匹敵するほど、解明が進んだ。その一方で、嗅球より上位の嗅覚中枢、例えば梨状皮質、嗅内皮質や辺縁系、さらには扁桃体、視床などにおける嗅覚情報処理についてはほとんど不明で、その解明が待たれている。嗅球より上位脳領域における嗅覚情報処理の研究が遅れているのは梨状皮質や嗅内皮質など、嗅覚情報処理に重要な役割を担う部位が脳底に位置し、神経活動記録を難しくしていることが大きな要因の1つとなっている。この状況を打破するため、我々は嗅上皮付きの単離脳標本の開発に取り組んだ。その結果、ニオイ刺激に応答する全脳標本という、画期的な実験系を作り出すことに最近、成功した。本研究ではこの新しい実験系を用いて嗅覚情報処理の解明を目指した。平成20年度はこの実験系の長所を生かしつつ、我々がこれまで明らかにした神経応答の機序を基盤として、梨状皮質においてニオイ情報、すなわち種類や濃度がどのように表現されるかの解明研究を進めた。嗅球と梨状皮質の神経結合の解剖学的知見などから、梨状皮質ではニオイ情報が神経活動の時間的、空間的変化として表現される可能性が高い。これを検証するため、電気生理学的手法と光学的計測法、さらに狂犬病ウイルスベクターを用いた解剖学的手法を併用して研究を行った。電気生理学的手法では最大64チャンネルの記録が可能(通常は16チャンネルで使用)な多点電極システムを用いた。超高速の光学的神経活動イメージングでは、膜電位感受性色素RH795を溶解させた脳還流液で全脳を染色し、種々のニオイ刺激にたいする神経応答の時間的、空間的変化を梨状皮質から記録した。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (12件)
Neuroimage 44
ページ: 1163-1170
Front Neuroanat 3
J Neurophysiol In press
Neurosci Res In press
Anatomical Science International 83
ページ: 195-206
Eur J Neurosci 27
ページ: 1547-1552
Neurosci Res 61
ページ: 172-181
Neurosci Res 63(3)
ページ: 177-183