研究概要 |
近年, 前シナプス入力がもたらすEPSP(Excitatory Post-synaptic potential : 興奮性シナプス後電位)と後シナプスニューロン発火に伴い樹状突起を逆伝播するBPAP(Back-propagated Action Potential ; 逆伝播活動電位)のタイミングの違いにより,シナプス可塑性の方向が異なるSTDP(Spike-TimingDependentPlasticity:スパイクタイミング依存性可塑性)が報告されている。本研究の先行研究としてニューロンのデンドライトにおけるSTDPがPD(Proximal Dendrite ; 樹状突起細胞体近位部)とDD(Distal Dendrite ; 樹状突起細胞体遠位部)で異なるという場所依存性を明らかにしてきた。 そこで本研究はPDとDDの相互作用に着目し、PDへの入力がBPAPを1つのキャリアとしてDDの情報処理に影響を与えるだろうことを仮定し、BPAPとPD入力のタイミングの違いがDDにおける可塑的変化(記憶情報処理)に及ぼす影響を光計測法を用いて計測・解析を行った. 結果として、BPAPとPD入力の同時到来時にはBPAPが増幅されDDに伝搬され、DDにおけるBPAPとシナプス入力によるEPSPとの重畳電位を促進させることがわかった。一方PD入力に20msec遅れたタイミングでBPAPが到来したときには, BPAPがローカルな抑制性細胞によるGABA-A作動性フィードフォワードIPSPのシャンティングにより抑圧されDDに伝搬され、重畳電位を減少させることも明らかにした.
|