大脳基底核の一部である黒質網様部(substantia nigra pars reticulata ; SNr)や視床下核(subthalamic nucleus ; STN)の神経細胞は、自発性の活動電位を発生し、また大脳基底核の内部の神経核同士の相互作用でも、同期的リズムが発生すると考えられている。これらの知見から、大脳基底核もリズム的同期発火に重要な役割を果たしていると考えられる。大脳基底核のてんかんへの関与は、PETイメージング等で示唆されてきた。またてんかんモデルラットであるGAERSにおいて大脳基底核系の出力核であるSNrの活動抑制により、てんかんの発生が抑えられるとの報告がなされている(Danober et.al. 1998 ; Paz et.al. 2007)。 われわれはtotteringマウスを用いて、大脳基底核とSWDの関係を検討し、次の結果を得た。(1)てんかんモデルラットの場合と同様に、SNrにキヌレン酸を投与することにより、SWDが消失する。(2)SWDとSNrのスパイクには相関性が認められる。(3)SNrへの興奮性入力の源であるSTNの神経細胞の性質を、脳スライス標本で検討したところ、入力抵抗が増加して、脱分極性の電流注入に対するスパイク発生が増加している。(4)STN神経細胞の入力抵抗の変化は、、HCN(hyperpolarization-activated channel)チャネルの活性の低下によるものと考えられる。現在、STNのHCNチャネルをブロックすることによる効果を検討中である。
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