研究課題
ドーパミンは線条体等の投射部位軸策終末のみならず、細胞体および樹状突起からも遊離されることが示唆されているが、単一ドーパミンニューロンからのドーパミン遊離機構は不明である。本年度本研究では、中脳の単一ドーパミン性ニューロンからのドーパミン遊離機構および遊離されたドーパミンの機能を解明するために、近年新たなバイオセンサー素材として注目されているカーボンナノチューブを用いた電気化学的解析を導入した。生後14-18日齢ラット中脳から、黒質および腹側被蓋野を含むスライス標本を作製し、電気生理学的に同定されたドーパミン性ニューロンの細胞体にカーボンナノチューブ電極を接着させて、パッチクランプ用増幅器を通じて大きな酸化電位(+700〜+800mV)を電極に与えることにより、細胞体からのドーパミン遊離を電流イベントとして記録した。即ち、ドーパミン性ニューロン細胞体からの自発性ドーパミン遊離を酸化・還元電流として記録することに成功した。現在カーボンナノチューブ電極の改良、開発を進めるとともに、単一ニューロンからのパッチクランプおよびドーパミン遊離同時記録を試みている。高感度のバイオセンサー素材を導入することによって、神経化学分野の新たな展開、発展が期待される。本研究により、ドーパミン性ニューロンから遊離されたドーパミンが、自身へのシナプス伝達を制御する、という新しい局所回路機構が同定されることが期待され、中枢神経系におけるドーパミンの新たな機能が明らかになる可能性がある。さらに本研究成果が、精神・神経機能のメカニズム解明およびそれらの機能障害に対する新たな治療法開発につながることも期待したい。
すべて 2009 2008
すべて 学会発表 (6件)