タイミングの認知と生成は系列行動の最も重要な基本要素の一つである。タイミング認知・生成に関わる脳領域と領域間の機能連関を明らかにするため、健常成人14名においてfMRI研究を行った(Aso et al. in press)。被験者は、数百msの刺激間隔(ISI)で提示される視覚刺激のISI長短判定(タイミング認知)、提示された刺激のISIを二回のボタン押し運動として再生(タイミング再生)する課題を行った。対照条件として、視覚刺激のサイズの大小判定課題とボタンの即時押し課題をそれぞれ用いた。fMRIは3テスラ装置を用いたエコープラナーイメージ撮像により行った。タイミング認知と再生は、それぞれの対照条件との比較において、共通して前頭前野、島皮質、下頭頂葉から上側頭回、小脳の有意な活動増加を伴った。また小脳の活動はタイミング認知課題において右半球、タイミング再生課題において左半球でより著明であった。これら小脳のタイミング認知・再生における活動は、大脳皮質と小脳が形成する神経回路の機能を反映すると仮定し、小脳の活動部位をシード領域として用いるpsycho-physiological interaction解析を行った。その結果、小脳活動との相関が課題依存性に変化する部位としてSMAが同定され、このSMA領域はタイミング認知課題の際に右小脳と、タイミング再生課題の際に左小脳と大きな相関を示していた。タイミング認知と再生機能に、SMAと小脳の機能連関が重要であることが示された。この結果は、タイミングの認知と生成がともにSMAと小脳が構成する神経回路の機能に依存していることを示唆する。再生の場合、SMAが生成する運動計画指令に基づき、小脳が次に運動を生成すべきタイミングを予測していると考えられるが、タイミング認知の際にも同じ回路が使われていると解釈できる。
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