研究概要 |
空間的注意のトップダウン制御の神経機構を調べるため、注意の移動が必要となる行動課題(Covert tracking課題)をサルに訓練し、前頭眼野を含む外側前頭前野からニューロン記録をおこなってきた。今年度はこれらに加え、課題中の微小電気刺激を試みた。予備的な実験では、前頭眼野の電気刺激でmovement fieldを決め、そこに提示した視覚刺激を選択する頻度が、閾値以下の電気刺激で増加するかどうかを調べたが、一貫した傾向が認められなかった。そこで、眼球運動が誘発されない刺激部位での影響を調べることにした。色の変化によるターゲットの手がかりを与えずに4つの視覚刺激を3秒間動かしてその中のひとつを任意に選ばせた。動き始めから0,500,2000ミリ秒のいずれかで前頭眼野周囲の微小電気刺激を行った。刺激は同部位に視覚応答性のニューロンが存在することを確認してから行った。動きの方向によるバイアスを除外するため、視覚刺激はいずれも固視点から遠ざかる方向に動き始めるようにした。それぞれのタイミングでターゲット位置の平均を求め、電気刺激の有無でそれらを比較したところ、電気刺激の影響は、ターゲットが動き出すのと同時に与えたときにのみ認められることが分かった。同様の実験を眼球運動が誘発される部位で行った結果、電気刺激による明らかな影響はみられなかった。これは、眼球運動そのものではなく、視覚応答を示すニューロン群によって、空間的注意が制御されていることを示唆する。
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