研究概要 |
smoth pursuit発現の神経機構についての研究は少なく、その詳細は充分には明らかになっていない。本研究では、このFEF近傍の領域からsmooth pursuitを発現する出力経路を明らかにするため、この領域に順行性の標識物質を注入し、その脳幹への投射様式を解析した。arcuate sulcusとspurの接する領域に近いarcuate sulcus後壁深部に順行性の標識物質(dextran biotin)を注入し、脳幹全体にわたりその投射部位をscanし、出力経路の中継核としてふさわしいと考えられる領域はどこかを、これまでに知られている眼球運動経路との関係で検討した。投射線維は、大きく、視床を通過する経路と、内包を下行する経路に分かれて下行した。前者は、終末分枝が同側の視床を背外側方向から腹内側方向に延びる、前後に長いclusterを形成しつつ、視蓋前域、中脳網様体に至る投射を認めたが、NOTには明らかな投射を認めなかった。内包経由の投射は、NRTPの外側部から内側部全体に終末を与えつつ、主に橋核内側部(dorsomedial, Paramedian, median pontine nuclei)に終止していた。また、両側前庭神経核のうち、水平性の前庭動眼反射の介在ニューロンが分布することが知られている、ventrolateral vestibular nucleus(Langer et al. 1996)を含む領域に投射していた。その他、橋, 延髄の網様体にも投射していた。従ってFEF近傍からのsmoth pursuitの発現経路の可能性として、PN, NRTPを介して小脳皮質に至る経路の他に、前庭神経核を介して直接運動ニューロンに至る経路の可能性が示唆された。
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