(1)NPBWR1欠損マウスは空間記憶に問題はなく、音による恐怖条件付けにも異常は見られないものの、文脈による恐怖条件づけに顕著な障害が見られることが明らかになった。またNPBWR1欠損マウスはintruderマウスに対して明らかな異常行動を示すことを見いだした。最初の接触までの時間が有意に短く、また接触時間が有意に長かった。このNPBWR1欠損マウスにおいて、侵入者のとの接触にともない強くかっ長期に持続する行動量、心拍数、血圧の上昇が観察された。このことからNPBWR1は扁桃体からの出力を抑制性にコントロールしていることが示唆された。NPBWR1はCeAlのGABA作動性ニューロンに発現しており、これらのニューロンは、扁桃体の外側まで投射していることが明らかになった。さらに、ヒトにおいて、NPBWR1のアミノ酸置換を伴うSNPの存在が明らかになり、機能的MRIによって、扁桃体の活動をfMRI検査で顔の提示による刺激に対する応答としてBOLD信号で評価したところ、404T型のSNPをもつヘテロ接合体の被験者は、404A/Aホモの被験者と明らかに違う応答性をしめした。404A/Aの被験者と比較して、404A/Tヘテロの被験者はすべての表情にも大きなBOLD信号の増加がみとめられた。このことから、NPBWR1はヒトの表情認知にともなう扁桃体の活動性にも大きな影響を持っていることが示唆された。(2)近年われわれが同定した神経ペプチド、QRFPの受容体GPR103AおよびGPR103Bは大脳辺縁系や大脳基底核に局在することから、情動との関連が強く示唆された。この系の生理的役割を解明するために、QRFPの欠損マウスを作製した。このマウスにはQRFPの遺伝子座にGFPがノックインされており、ヘテロKOマウスにおけるGPFの局在は視床下部のQRFP陽性細胞に認められた。現在、このマウスの表現系を解析すべく、行動テストバッテリーによる評価を行っている。
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