研究概要 |
本研究では時間と空間に関する脳内表現の解明を目指している. 視覚空間認知の研究は京都大学医学部河野らにより大きく進展している. スクリーン上のターゲットを目で追跡している最中に, 動く図形が短時間あらわれる. 物体の動きに反応する脳領野で神経活動を調べたところ, 一つの領野MTのニューロンは網膜上の速度をコードしており, もう一つの領野MSTでは(目の動きにかかわらず)スクリーン上の速度をコードしていることが明らかになった. MT野でとらえられた網膜上の速度情報が, MST野では眼球の動きが補償されて, 外界座標系の速度情報へと変換されていることを意味している. 申請者はこの実験データの解析作業に加わった[J. Neurophysiol. 2007]. 現在はそのこの情報処理が実行される神経経路に関する実験検証が行われており, それをもとにしてモデルを構築している. 時間認知の研究は東北大学医学部や玉川大学脳研究施設で丹治らにより開始されている. 数秒間の待ち時間の後にレバーを離す課題を遂行中のサルの脳活動が記録される. このデータが出始めたので, 申請者はその神経メカニズムについての時間認知神経過程の回路モデルを作って, 準備的データ解析をしている. 新らしく得られるデータが想定したモデルに無矛盾かどうかを検証する計画をもっている. このほか, 脳内スパイク信号パターンが機能と関係していることを明らかにする解析が進展してきた.
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