研究概要 |
今年度は、昨年度からの継続として、筋強直性ジストロフィーやパーキンソン病などの各種神経変性性疾患を対象に、感情認知機能および社会的認知機能を評価する一連の検査を施行し、感情認知障害について検討した。 筋強直性ジストロフィーに関しては、これまでその認知神経基盤が不明であった社会的認知機能障害に関する検討を行った。具体的には、独自に開発した情動認知検査 (Suzuki, Kawamura, et al. 2006) を用いて感情に対する感度を測定した。結果として、筋強直性ジストロフィー症例では恐怖や怒り、嫌悪などのネガティブな情動に対する感度が低下していることを示した (Takeda, Kawamura et al. in press) 。また、筋強直性ジストロフィー症例では側頭葉前部、島、前頭葉眼窩部などの皮質下に病変が存在し、ネガティブな情動の感度が低下している症例では特に側頭葉前部の病変が強いことを示した (Kawamura et al. in press)。 パーキンソン病に関しては、行動選択の問題について意思決定課題を用いて検討し、パーキンソン病において報酬と罰の認知のバランスが崩れていることを示した。これらの結果は書籍や総説、および学会シンポジウムなどで報告した (小早川、河村ら、社会活動と脳2008,神経心理学会シンポジウム2008) 。パーキンソン病における情動認知・生成の障害については英文誌の総説においても報告した (Kawamura, Kobayakawa 2009)。
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