研究概要 |
Type I, II投射線維それぞれの軸索終止部位の電子顕微鏡による検索を行なった。Type I線維系が分布する分子層深部には、非対称性シナプスがスパインに終止することが観察され、Type I線維系は興奮性の投射系であることが確認された。一方、Type II線維が分布する分子層表層部では、多くの対称性シナプスが樹状突起のシャフト部に終止することが観察され、Type II線維系は抑制性の投射系であることが確認された。おそらく穎粒細胞の樹状突起遠位部に直接終止していると考えられるが、他の介在細胞あるいは歯状回(DG)への入力線維に終止していることも考えられる。 嗅内野の嗅脳溝から遠近方向の一部の高さからDGの中隔一側頭葉方向の一部に投射した信号は、DG内では顯粒細胞を経由して歯状回門の大型細胞の軸索により興奮性信号が中隔側頭葉方向に広がることがわかった。歯状回穎粒細胞からの信号はCA3錐体細胞に同じ高さの狭い範囲に投射するが、CA3錐体細胞からの信号は、連合線維によりCA3領域内に縦方向に広がるほか、Schaffer側枝によりCA1へも同様に縦方向に広がる。今後この様な縦走性線維投射の生理学的様態が調べられていけば、海馬体内における情報処理過程が明らかになるものと期待される。
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