研究課題
自然発症運動失調マウスHotfoot5Jは、デルタ2グルタミン酸受容体(delta2受容体)遺伝子の変異により、delta2受容体が欠損する。そのためノックアウトマウスと同じフェノタイプ、すなわち、小脳LTD誘導の障害、平行線維-プルキンエ細胞シナプスの放出確立の減少、登上線維によるプルキンエ細胞の多重支配の残存と強い小脳失調が観察される。レンチウイルスベクターを用いてHotfoot5Jマウスの小脳プルキンエ細胞に野生型delta2受容体遺伝子を導入することで、運動失調をはじめとする異常がレスキューできるのかを検討した。生後6日のHotfoot5Jマウス小脳にdelta2受容体発現レンチウイルスベクターを接種し、4週後にロータロッドにて運動能力を評価したところ、顕著な運動失調の改善が認められた。パッチクランプ解析では、LTD誘導の障害、PPF比の増大、プルキンエ細胞多重支配の残存のすべてが完全に回復していた。このように、レンチウイルスベクターを用いた遺伝子治療により、運動失調マウスHotfoot5Jの異常を大きく改善させることに成功した。次に、delta2受容体のどのドメインがdelta2受容体のどの機能に重要であるのかを決定するために、delta2受容体のさまざまな部分欠損体や他のイオン透過型グルタミン酸受容体とのキメラ体を作製した。これらのコンストラクトをレンチウイルスベクターを用いて、delta2受容体欠損Hotfoot5Jマウスのプルキンエ細胞に発現させた。その結果、N末端ドメインとC末端ドメインを1つの膜貫通ドメインでつないだコンストラクトにより、運動失調をはじめ、ほぼすべての異常がレスキューされた。以上の結果から、delta2受容体はアミノ酸リガンド結合ドメインに加えてチャネルポアがなくとも、十分機能を果たすことが明らかとなった。
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