大脳皮質における細胞構築、神経回路の特徴として層構造が挙げられる。大脳皮質細胞の形態学的、生理学的特性は層ごとに異なるのである。これらの性質は、発生期の内在的あるいは外来的な要因によって決定されると考えられるがが、その制御機構については不明な点が多い。私たちは、この問題に取り組むために、発生期大脳皮質に層特異的に発現する遺伝子の存在、ならびにそれらの分子が果たす役割について研究を行った。本研究では、まず層特異的遺伝子の単離を行い、ネトリン受容体ファミリーの一つであるmuc5h4遺伝子が発達期ラット大脳皮質第4層に特異的に発現することを示した。また、領野特異性も見られ、unc5h4遣伝子は一次視覚野、一次体性感覚野に強い発現が見出された。さらに、unc5h4とそのリガンド分子が大脳皮質細胞の発達に果たす役割を明らかにすることを目的として、培養系を用いた機能解析を行った。その結果、netrin-4タンパク質はunc5h4発現細胞に結合することから、netrin-4が結合するリガンドの一つであることがわかった。次に、nertin-4遺伝子の発現を調べると、大脳皮質および視床に強く発現していることがわかった。さらに、分散培養下において、unc5h4を発現している皮質第4層神経細胞の細胞死がnetrin-4タンパク質存在下で減少することが明らかになった。以上の結果から、unc5h4はnetrin-4との相互作用により神経細胞の生存を調節し、大脳皮質の一次感覚野第4層における神経細胞の発達、分化に関与することが示唆された。
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