研究課題
脳は、多様な神経細胞集団が極めて複雑なネットワークを形成して機能しているが、発生過程では個々の神経細胞やグリア細胞が細胞間相互作用を積み重ねることにより形成される。我々は既知のガイダンス分子とは全くホモロジーの無い抑制性の神経ガイダンス分子を見出し、Draxin (Dorsal repulsive axonguidance protein)と命名した。Draxinは分子量約5万の分泌型タンパクである。ニワトリ初期胚の視蓋において、2種類の投射神経(mes V neuronとtectobulbar neuron)の細胞体は背側に存在し、それらの軸索は腹側に伸長する。Draxinの視蓋での発現は背側に強く腹側に弱い勾配を持っており、これらの軸索成長に反発的に働き、軸索が腹側に伸びることを促進する活性を持つことを明らかにした。mes V neuronとtectobulbar neuronの軸索が視蓋を出た後も、Draxinは勾配を持って発現され続けるため、次に視蓋に侵入してくる視神経の投射にも関与する可能性が考えられた。生後7-10日目のDraxin遺伝子欠損マウスの網膜をDiIによって標識し、その投射パターンを解析したところ、網膜腹側、耳側、鼻側からの上丘への投射において、正常な投射に加えて異常投射のフォーカスが観察された。しかし、網膜背側からの投射は、正常であった。さらにDraxinタンパクは培養網膜組織片からの神経突起形成を阻害するが、領域による感受性の差異は観察されず、Draxinタンパクの網膜組織切片への結合にも領域差は観られなかった。現在、生後2-4日目マウス網膜神経の上丘での枝分かれ状況を解析している。Draxin欠失による変化の解析から、詳細に解析されてきた網膜-視蓋(上丘)投射形成において、新たにDraxinも関与することを明らかにした。
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