研究概要 |
齧歯類の髭の感覚は三叉神経第二枝である眼窩下神経を介し、三叉神経核主知覚核(体性感覚)三叉神経脊髄路核(痛覚)を経て内側毛帯線維束に合流し、内側毛帯シナプスとして視床VB核投射細胞(VB投射細胞)にシナプスを形成する。発達段階の内側毛帯シナプスにおいて、VB投射細胞は多くの軸索を受け、多数のシナプスが作られる(多重支配)。その後、必要なシナプスが残り、不要なシナプスは除去されるというシナプス除去過程を経て、生後21日令までにはVB投射細胞はほぼ一本の内側毛帯繊維で支配するようになることが、電気生理学的に報告されている(J.Physio1.573 : 121-132, 2006, Takeuchi et al., Neurosci. Res. 2008)。この除去過程は極めて強固であり、たとえば、髭を生後すぐから抜き続ける操作をしても影響をうけることはないとされてきた。 我々は、視床VBのバレロイドのマップ形成の臨界期(生後5日)を過ぎた生後7日に眼窩下神経を切断し、生後21-25日齢でVB投射細胞から内側毛帯シナプス電流を記録したところ、幼弱期様の多重支配をみとめ、一本あたりのAMPA受容体を介するEPSCs(EPSC s _</fiber>)の減弱および減衰時間の延長を認めた。しかしながら、投射細胞に入力する総シナプス電流(maxEPSCs)は正常と差がなかった。また正常では認められないサイレントシナプスが認められた。次に、多重支配の臨界期を決めるべく、内側毛帯のシナプス除去が終了した生後21日齢で眼窩下神経を切断し、術後一週間後に測定を行った。その結果、興味深いことに、内側毛帯シナプスは再多重化を示し、EPSC s _</fiber>の減弱および減衰時間の延長を認めた。一方でmaxEPSCsも減弱し、サイレントシナプスは認められないなど、生後7日齢で処置した場合との差異も存在した。
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