大脳新皮質には、基本的な単位である局所神経回路が存在し、それらが一団となって動作する事で高次脳機能が表現される事がこれまでの研究で明らかとなってきている。しかしながら、その回路がどのような配線構造をとるのか、どのような動作原理で機能するのか、未だ理解されるには至っていない。21年度は、大脳皮質の局所神経回路構築を解析する上で、一つの大事な問題であるシナプス結合に関して、より正確に定量的に解析する為の技術を向上させる為の工夫をし、それに関する技術的な論文を報告した。その概要を下記に示す。シナプスを定量的に解析する方法の一つに、連続超薄切片を電子顕微鏡を使って観察し、神経組織を3次元再構築し解析する方法が考えられる。私達は、この方法を使い、これまで、多くの神経細胞を解析してきたが、下記の2つの問題点に気がついた。1)超薄切片の厚みの正確な測定が、3次元再構築像の質を大きく左右する。2)切片面に平行あるいは平行に近い角度に存在するクレフト面を持つシナプス結合は、従来のシナプス結合の定義では見逃してしまう為、正確なシナプス入力の密度解析が出来ない。この2つの問題を改善する為に下記の方法を提唱したい。まず、超薄切片の厚み測定方法であるが、従来、minimum folding法、干渉光測定法、ミトコンドリアを利用した推測法が使われて来た。いずれも、正確な厚みを測定する方法とは言えない。今回、私達は、1nmの解像度を持つカラー3Dレーザ顕微鏡を使って超薄切片の厚みを測定し、信頼できる測定が可能である事を確認した。次に、シナプス結合の同定に関して、切片面に平行あるいは平行に近い角度のクレフト面を持つシナプス結合は、連続切片で、従来のシナプス結合の同定の為の定義の順序通りにシナプス結合の要素が観察できる場合はシナプス結合と判断して良い事を、tomography解析等により見出した。
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