ゼブラフィッシュの手綱核の左右差の成立が、発生過程のゼブラフィッシュの脳脊髄液の流れと関係があるかどうかを調べるために、胚の脳室に蛍光微小ビーズを注入した。その結果、脊髄の中心管では、底板細胞の繊毛の回転方向と同じ向きの対流と、それに直行した、腹側では尾側への、背側では頭側への流れが見られた。手綱核がある間脳の背側に接する脳室では、右から左へ流れる渦流が見られた。これらの流れと、細胞分化の領域的極性との関係を調べるため、平面細胞極性シグナルに関与する遺伝子に突然変異を持つ胚で、繊毛の配列がどのように影響を受けるかを調べた。脊髄の底板細胞では、頂端側の細胞膜から、背側後方に向けて傾いた繊毛が一本だけ生えており、一定方向に回転している。平面細胞極性突然変異胚では、これらの配列がランダムになっていることが確認された。手綱核の亜核特異的に、Gal4-VP16やCreが発現するゼブラフィッシュの系統を作製した。これらの系統と、UASの下流に1oxP-ds Red-1oxPとジフテリア毒素やnitroreductaseを組込んだトランスジェニック系統をかけ合わせることによって、手綱核亜核特異的に、神経活動を制御したり、トランスジェニック個体にmetronidazoleを投与することによって、特定の手綱核亜核のみを除去することが可能になった。この2重トランスジェニック系統と野生型のゼブラフィッシュを用いて、光を条件刺激として、電気ショックを非条件刺激とする、恐怖反応学習がどのように異なるかを調べた。予備的実験では、条件刺激の提示に対する恐怖反応の著しい亢進が見られた。
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