本研究では、トランスジェニックHuC :: Inverse Pericamをつかって、遺伝学的にコードされたカルシウム感受性蛍光蛋白による神経活動の検出する観察システムを既に確立した。また、行動パラダイムとしては、能動的回避恐怖学習を開発した。赤ランプが点灯後、水槽のしきりの同じ側に留まると15秒後に電気ショックを受け、15秒以内に反対側に逃げればショックを回避できるという回避行動を学習した。トランスジェニック魚と、赤ランプ刺激だけを与えた対照実験群トランスジェニック魚を用いて、右眼に与えた赤い光に対する終脳と、視覚中枢である視蓋における反応を、高速高感度カメラを用いて観察した。恐怖条件付け学習を習得したトランスジェニック魚群では、偽条件付けをした対照実験のトランスジェニック魚群にない、新しい反応が終脳に現れた。この実験結果は、ゼブラフィッシュの終脳の扁桃体または大脳皮質にあたる領域において、条件付け学習によって一群の神経細胞アンサンブルが選択され、恐怖行動をコードするようになったことを示唆している。さらに、能動的回避学習(Go学習)が成立したゼブラフィッシュを、赤いランプが点灯して、水槽の反対側に逃避すれば、電気ショックが与えられるという新しく変更されたルールに曝すと、ゼブラフィッシュは、新たなルールの学習(No-Go学習)を習得できることを確認している。ルール変更によるNo-Go学習を習得したゼブラフィッシュでは、条件刺激(赤ランプ)の提示で、Go学習を習得した後とは異なる領域の神経細胞が興奮することを観察している。以上の実験結果は、ゼブラフィッシュ終脳外套部では、異なるルールに基づく行動プログラムごとに、異なる細胞集団が活性化されることが明らかになった。
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