研究課題
本年度は、BDNF processing障害マウスの大脳皮質/海馬の形態学的解析、各細胞マーカーによる染色、stereologyによる各領域の容積解析などを行い、proBDNFによる脳/神経細胞形態形成への影響を見出した。(1)BDNFプロセッシング障害マウス(proBDNF>mBDNFマウス)の脳切片のゴルジ染色を行ったところ、海馬歯状回顆粒細胞の樹状突起数が著し減少していたこと、しかし、隣接切片について細胞死マーカーTUNELの染色家結果では細胞死は見いだされなかった。(2)さらに、Dil色素導入法により小脳プルキンエ神経細胞形態の可視化とその定量解析などを行った。その結果、樹状突起の顕著な発達遅延が起こっていること、その遅延はp75受容体依存的であること、隣接する小脳顆粒細胞では逆に細胞死が顕著となっていることなどが明らかになった。(3)一方、stereologyによる各領域の容積解析では、成体マウスの海馬、大脳皮質の著しい体積減少が見いだされた。このように、proBDNF→mBDNFはマウス脳構造の発達に重要な反応であることが見いだされた。(4)本マウスは行動レベルではdecision-making、自発的活動、常同行動などに有意な異常が見いだされた。今後は、これらの表現型に関係するシグナル伝達の解明、特徴的な行動異常に関係する脳内責任領域の解析を行う。またこのようなBDNF機能障害マウスの機能改善に関するBDNF遺伝子治療法の開発研究も本年度行った。
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Gene Ther. 15
ページ: 561-571