研究課題
エストロゲンは、生殖関連行動だけでなく、個体の活動性や不安・情動性のレベルの調節にも深く関与していることが近年明らかとなってきている。これまでエストロゲン受容体アルファ(ER-α)およびベータ(ER-β)遺伝子欠損マウスを用いて我々が進めてきた行動解析では、エストロゲンによるホームケージ活動量の促進作用にはER-αが関与し、不安情動性の低減作用にはER-βが関与していることが示唆されている。しかし、これらのER-αあるいはER-βを介したエストロゲンの作用において、主に脳内のどの領域が関与しているのかについては、いくつかの可能性を示唆する報告はあっても決定的な知見は得られていない。そこで、本研究課題では、「活動性」と「不安情動性」の制御に果たす2種のERの役割分担とその脳部位を特定するために、我々が最近確立した脳部位特異的な遺伝子操作法、すなわち、ER-αあるいはER-βのsiRNAをアデノ随伴ウイルスに組み込んだ上(AAV. siER)で、脳部位特異的に投与する方法を用いることとした。今年度は、エストロゲンによるホームケージ回転車活動量(RWA)の制御に果たすER-αの役割とその脳部位の決定に関する解析を進めた。雄マウスの視床下部腹内側核に両側性にAAV.siERαを投与すると、精巣除去前に測定した場合にも、精巣除去後にエストロゲン処置した場合にも、コントロール群(AAV. siLuc)に比べ、RWAが有意に低いことが確かめられた。組織学的検索により、これらのマウスでは、視床下部腹内側核のER-α発現はほぼ完全に消失していること、さらに、片側の腹内側核でのみER-α発現の消失が認められたマウスでは、AAV.siERα群とAAV.siLucのほぼ中間のレベルの活動量が見られることが確かめられた。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (11件)
Journal of Neuroscience 28
ページ: 10399-10403
Psychoneuroendocrinology 33
ページ: 634-642
Endocrinology 150
ページ: 1061-1068
Physiology and Behavior 96
ページ: 300-306
