研究課題
嫌悪情動が関わる学習は、容易かつ強力に獲得され、長期間に渡り持続する特性を有する。このような侵害的な嫌悪刺激に伴う学習制御には、特異的な神経回路と分子機構が関わる事を示唆している。本研究は、情動制御に重要な脳部位のうち、扁桃体神経亜核特異的に遺伝子操作を可能とするC57BL/6近交系の遺伝的背景を持ったマウス系統を樹立し、嫌悪情動学習制御における扁桃体亜核の機能を、ストレスホルモン(グルココルチコイド)に焦点をあて解析することを目的とする。この目的のために、本年度は、すでに扁桃体の中心核、外側核、内側核にそれぞれ選択的発現を示す遺伝子の蛋白開始コドンに、誘導型遺伝子組み換え酵素CrePRを導入したマウス系統を作製し、解析を進め、一部についてはCrePR活性を誘導できることが明らかとなった。一方、新たにグルココルチコイド受容体(GR)遺伝子にCrePRの認識配列(loxP)を導入するための標的遺伝子組換えベクター(TV)を大腸菌内相同遺伝子組換え法とGateway法を組み合わせた方法で作製した。この方法を用いることで、TVは約2週間で構築し、ES細胞に構築したTVを導入し、標的遺伝子組換えES細胞を取得した。現在、得られたES細胞からキメラマウスを作製中しキメラ率の高い個体を得た。今後このキメラマウスを用いて、GR遺伝子のコンディショナル遺伝子操作マウス系統の確立を進める。本研究で作製したマウス系統は扁桃体の機能を分子、細胞、個体レベルで検証する動物系統資源として本研究領域の推進に貢献するものと考えられる。
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