代表者らの以前の研究で、神経系の中でも特に前シナプス終末やBergmann glia終末足などでセプチン重合体がクラスターを形成することを見出したが(萩原ら、未発表)、その分子機構や生理的意義は不明である。本年度はセプチン重合体がリン脂質膜と直接相互作用することを再構成系で示すとともに(Curr Biol 2009)、細胞膜直下のセプチン系とアクトミオシン系との協調が形態形成や剛性の制御に必須であることを示した(NatCell Biol 2009)。しかし、個体レベルでSept7遺伝子を欠損するマウスは胎生致死となるため(Wareら、未発表)Sept7 floxedマウスを作製し、細胞特異的にSept7遺伝子を欠損させるべくL7-Cre、S100b-Creなどのドライバー系統と交配した。21年度中にプルキンエ細胞およびバーグマングリア特異的Sept7欠損マウス個体の解析に着手する予定である。これらの系統や試料の供与、未発表データや新規解析手法の共有などを通じて、領域内および国内外グループとの共同研究を積極的に行っている。 セプチン系の異常を伴うヒトの精神・神経疾患が複数知られるようになり、疾患モデル解析系としてのセプチン遺伝子改変マウスの重要性が注目されつつあるため、これまでの知見を英文総説として著書(分担執筆)を出版した。
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