研究課題
プロスタグランジン(PG)類の生体作用は、アスピリンの標的として発熱などの中枢作用がよく認識されているにも関わらず、いまだ新奇機能が隠され、既知作用についてもその分子メカニズムは不明であった。PGの作用は、各PGに特異的な受容体によって介達されるが、研究代表者はこれまで、PG受容体欠損マウスを作成・解析することで、PGの病態・生理作用に関わる責任受容体を同定してきた。そこで本研究では、発熱(EP3)や脳の性分化(EP4)に関わるPG受容体に着目し、PG作用発現の分子機構の解明を試みた。以下に20年度の成果を示す。(1) 発熱-EP3受容体視索前野EP3発現ニューロンの解析から、PGE2による発熱応答時には視索前野のGABA-A受容体蛋白の発現が低下すること、PGE2のこの作用はEP3受容体とGi/o蛋白を介することを見出し、PGE2による発熱作用は、GABAの脱抑制を介する可能性を示唆した。(2) 脳のオス化-EP4受容体EP4受容体欠損オスマウスは、マウンティングや挿入などのオス型性行動の発現が顕著に減弱する。脳のオス化を支配する視索前野ニューロンの初代培養を用いてPGE2の効果を調べたところ、PGE2はフィロポディア形成促進作用ならびに先導端への細胞骨格制御タンパク質の局在促進作用を示すことを見出した。現在、これらPGE2作用の分子基盤的解析を進めている。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件)
Proc Natl Acad Sci USA 105
ページ: 11352-11357
Biol Psychiatry 64
ページ: 311-319
J. Biol. Chem 283
ページ: 11064-11071
Neurosci. Res 60
ページ: 439-451