研究課題/領域番号 |
20022028
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高橋 淑子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (10183857)
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研究分担者 |
齋藤 大介 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (90403360)
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キーワード | 神経冠細胞 / 副腎 / 交感神経 / 細胞移動 / ケモカイン / BMP / CXCR4 / Neuregulin |
研究概要 |
発生初期にみられる神経系組織の成立機構について、神経前駆細胞の移動と上皮化に注目し、それらを制御する分子機構の解明に取り組んだ。細胞移動については、末梢神経系のほぼすべてを作り上げる神経冠細胞(Neural crest cells;神経堤細胞ともいう。以下NCCと呼ぶ)をモデルとした解析を行い、背側大動脈からの誘引シグナルについて新規の知見を得た。また上皮形成については、第二の神経管形成であるSecondary neurulationに注目し、Pax2が重要な役割を果たすことを見いだした。まずNCCのサプタイプの1つであるSA細胞の移動機構に関して、背側大動脈がSA細胞の移動を誘引する能力をもつこと、またこの誘引能の実態が大動脈付近の間充織内で発現するケモカインSDF1とNrg1であること、さらに、SDF1とNrg1の発現は、大動脈から放出されるBMP4/7により誘導されることを明らかにした。このように、SA細胞の移動において、ターゲットとなる大動脈の重要が見えてきた。SNの機構については、SNに参画する間充織様の神経前駆細胞(予定SN細胞)を同定し、これらの細胞に特異的に遺伝子導入する系を確立した。この系を用いることで、SN形成にRhoファミリーのRac1が必要であることを明らかにした。次に、予定SN領域において転写因子Pax2が特異的に発現することに注目し、Pax2をSN領域の近傍の体節細胞内で異所的に発現させたところ、異所的な神経管構造が形成されることを発見した。この異所的なSN形成の系を利用して、Pax2はその下流で他の転写因子Tbx6L(体節中胚葉の形成に必須であることが知られている)の作用を抑制することがわかった。上記の研究から、SNによる神経管形成が、Primary Neurulationとは全く異なるメカニズムによって引き起こされることが明らかになった。
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