研究課題
神経細胞は通常1本の軸索と複数の樹状突起を有し神経極性を形成する。しかしながら、神経細胞が極性形成の過程でいかにして1本のみの軸索を形成しそれを維持することができるのか、その分子メカニズムはわかっていない。本研究では、我々が最近同定した新規脳特異タンパク質Single Axon Related (Singar)1の機能と分子メカニズムを中心に解析することにより、「神経細胞が、発生の過程でいかにして確実に1本の軸索を形成し、これを神経回路内で維持することができるのか」という問題の解明を目指す。前年度までの研究から、神経極性形成過程の培養海馬神経細胞のSingarをRNAiで発現抑制すると過剰な軸索が形成され、また、Singar1を過剰発現した場合はShootin1による過剰軸索の形成が抑制され、逆にSingar1の発現を抑制した場合はShootin1による過剰軸索の形成が促進されたことから、Singar1が神経極性形成過程で神経細胞の過剰な軸索の形成を特異的に抑制して正常な神経回路の形成・維持に重要な役割を果たすものと考えられる。本年度は、Singar1の分子作用機構を明らかにするため、Singar1と相互作用する分子の探索を進め、Rab33AがSingar1と相互作用することを見出した。また興味深いことに活性型のRab33Aを神経細胞に発現させると、過剰軸索が形成された。このことから、Singar1はRab33Aと相互作用をすることによって過剰軸索の形成を抑制する可能性が示唆された。また、Singarがリン酸化を受けることも明らかとなり、昨年度に続いていくつかのリン酸化酵素とリン酸化部位を同定した。さらにSingar1ノックアウトマウスの作成に関しては、Singar1のノックアウトされたキメラマウスの作成に成功している。
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J. Cell Biol 181
ページ: 817-829
http://bsw3.naist.jp/itoh/home/oldhome/contents/inagaki/shoukai_inagaki.html