研究課題
中枢神経系構築の仕組みを明らかにするためには神経幹細胞の運命決定機構の分子基盤の解明が不可欠である。本研究はその解明を目的として、胎生期に的を絞り、神経幹細胞が枯渇することなく、ニューロンおよびグリアを生み出す性質を保持したまま増え続ける「自己複製機構」と、胎生の進行に伴ってニューロン分化優位の状況からグリア分化優位の状況に変化する「分化のプリファレンス遷移機構」の解明研究を実施した。平成22年度は特に後者に焦点をあてた。FGF2とEGFは神経幹細胞の自己複製に寄与していることが知られており、胎生期の脳においてFGF2の発現はEGFに先行する。このふたつの増殖因子の神経幹細胞運命付けにおける機能的差異の詳細は明らかでなかったが、本研究により次の知見を得た。(1)神経幹細胞培養系をFGF2かEGFのいずれかで1日間パルス刺激した後に除去し4日間培養して分化させたところ、EGFパルス刺激群に著明なアストログリア分化が見られ、アストログリア分化への方向付けはEGFが担うことが確認された。(2)FGF2とEGFの両者同時添加でパルス刺激した場合は増殖因子除去後のアストログリア分化はあまり見られなかったことから、EGFによる神経幹細胞のアストログリア分化方向付け機能をFGF2が抑制することが示された。(3)FGF2が誘導する分子として同定したFGF2シグナル抑制分子Spry4の脳内発現は胎生の進行と共に増加し、神経幹細胞が存在する脳室周囲に局在した。(4)Spry4を神経幹細胞培養系に強制発現させ、FGF2とEGFの同時添加でパルス刺激したのち、両増殖因子を除いて分化させると、著明なアストログリア分化が見られた。これらの結果を総合すると、神経幹細胞に対して同様の増殖作用を持つFGF2とEGFのうちアストログリア分化への方向付けをEGFが担いFGF2がそれを抑制することやSpry4がその抑制を解除することがわかり、これらの分子の発現動態から、胎生の進行に伴って神経幹細胞をニューロン分化優位の方向からアストログリア分化優位の方向に遷移させる分子基盤を示唆することができた。
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Molecular Cancer (印刷中)