研究概要 |
神経細胞の樹状突起(後シナプス)へのmRNA輸送と局所的翻訳は、シナプス形成・可塑性の基盤となる重要な細胞システムである。我々はこれまでの研究で、局所的翻訳における重要なRNA結合タンパク質としてRNG105を見いだした。RNG105は、Na^+/K^+ ATPaseのサッブユニットアイソフォームをコードするmRNAの樹状突起への輸送に関わる。また、RNG105ノックアウトマウスの神経細胞では、興奮性シナプスの形成が脆弱になる。 本年度の研究では、RNG105ノックアウトマウスの神経細胞において、Na^+/K^+ ATPaseの局所的な活性を蛍光顕微鏡を用いて測定する系を開発した。方法としては、大脳神経培養細胞内のNa^+濃度をNa Green蛍光指示薬を用いて蛍光イメージング・定量解析した。細胞外液のK^+濃度を変化させ, その時のNa^+濃度をモニターすることによって、細胞内の各々の場所におけるNa^+/K^+ ATPase活性の程度を定量することに成功した。その結果、RNG105ノックアウトマウスの神経細胞では、樹状突起特異的にNa^+/K^+ ATPase活性が低下していることが分かった。 また本年度は、RNG105ノックアウトマウスの神経細胞におけるシナプス機能を、電気生理学的に測定する研究にも着手した。胎仔1匹1匹から個別に大脳神経細胞を培養し、mEPSCおよびmIPSCを測定する系の条件検討をおこなった。様々な培養法を試行し、mEPSCおよびmIPSCを測定できる系を確立することができた。今後この系を用いて、RNG105ノックアウトマウスにおいてシナプス伝達にどのような異常が生じているのかを解析することが可能になった。
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