研究概要 |
私どもはAMPA型グルタミン酸受容体のシナプスでの機能発現に必須であるPSD-95に着目し、PSD-95のシナプス局在を規定するPSD-95パルミトイル化脂質修飾酵素P-PATファミリー(DHHC2, 3, 7, 15)を同定した。これまでに、P-PATがPSD-95のパルミトイル化を介してAMPA受容体の恒常性維持に関わっている可能性を見出した。本研究はこれまでの結果をさらに発展させ、1)神経活動依存的にP-PAT機能を制御する情報伝達機構、および2)P-PATの生理機能を明らかにし、P-PATによるAMPA受容体の動態制御機構の解明を目指す。本年度の研究実績は以下のとおりである。 in situ hybridizationによる発現分布解析から、海馬では4種類のP-PATのうちDHHC2およびDHHC3が主要な役割を果たしていると考えられた。DHHC3は細胞体のゴルジ装置に特異的に局在し、一方DHHC2は樹状突起内のポストシナプス近傍にも小胞上に存在しており、分子種により異なる局在をとることが明らかになった。全反射タイムラプス顕微鏡を用いた解析により、DHHC3はゴルジ体に恒常的に局在するに対し、DHHC2は神経活動を阻害した際にCa2+濃度の低下に反応して、細胞膜近傍に集積することが分かった。さらに、RNA干渉実験の結果、神経活動の抑制によって誘導されるDHHC2によるPSD-95のパルミトイル化が側PA受容体のシナプス後膜への集積に必須であることが分かった。 以上の結果から、P-PATのひとつであるDHHC2は神経活動の低下を感知してシナプス近傍に移動し、パルミトイル化PSD-95量を増加させることにより、シナプスAMPA受容体数を制御することが分かった(Noritake, et.al., 投稿中)。このように今年度の研究計画は達成できたと考えている。
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