研究課題
本研究は統合失調症の病態にジェネティックな機序とエピジェネティックな機序が複雑にからんでいると想定し、これら両者が関与する機序を解明することを目的とした。そのためゲノムワイド関連解析を行い、関連遺伝子SMARCA2を発見した。関連多型はミスセンス多型とイントロン多型でイントロン多型はリスクアレルはこの遺伝子の遺伝子発現の低下と関連していた。関連ミスセンス多型による局在を各アレルのGFP融合タンパク質を細胞に発現させて検討した結果、リスクアレルは細胞局在の効率が悪く、また、形質転換した細胞形態もアレル間で差が見られた。各アレルを発現させた細胞での遺伝子発現の変化とRNAiによりノックダウンした細胞での発現変化を比較した結果、リスクアレルではノックダウンした細胞と遺伝子発現プロファイルは有意に相関していた。これより、リスクアレルは機能低下型と推測された。さらに、メタンフェタミンやNMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬の慢性投与による統合失調症も出るマウスを作製して、Smarca2遺伝子発現レベルを検討した結果、有意に遺伝子発現は低下していた。また、抗精神病薬投与では逆に有意に遺伝子発現が上昇した。そこでSmarca2遺伝子のノックアウトマウスを作製して行動解析を行った結果ノックアウトマウスはプレパルス抑制や社会活動性の低下など、統合失調症に特徴的な傾向を有意に示した。これらの所見から、統合失調症の病態にエピジェネティックな機序が関与し、それにより多数の遺伝子の発現が変化して、統合失調症の複雑な病態が発生する、と推測された。
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Hum Mol Genet. (印刷中)
PLoS ONE 3
ページ: e1640