研究課題
統合失調症の進行性脳病態を解明するため、神経画像、分子、遺伝子レベルでの多角的な検討を行った。健常者、統合失調症の前駆期、初発統合失調症、慢性期統合失調症の患者群を対象に、1H-MR spectroscopyを用いた前部帯状回グルタミン酸レベルの計測を行った。その結果、健常対照群に比べ、前駆期では一過性にグルタミン酸レベルが上昇しており、その後初発期、慢性期にかけて減少することを見出した。この結果は、グルタミン酸の一過性の過興奮による神経毒性によって前駆期に病態が進行し、その後グルタミン酸レベルの低下に移行することを示しており、統合失調症の早期介入上重要な所見であると考えられる。健常者、統合失調症の前駆期、初発統合失調症、慢性期統合失調症の患者群を対象に、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いた前頭葉の酸素化ヘモグロビン濃度変化を測定した。前駆期~慢性期にかけてNIRS信号が減衰する様子がみられ、統合失調症の早期介入にNIRSを臨床応用するための根拠を与える知見であると考えられる。同様な検討をミスマッチ陰性電位(MMN)についても行い、同様な結果を得た。これらの所見と分子、遺伝子の対応を検討した。脳磁図で計測したMMN(MMF)と血液中d-serineの相関、NIRS信号とCOMT vall58met多型、σ1受容体遺伝子多型との関連、海馬・扁桃体体積とGRIN2A遺伝子多型との関連、を見出した。これらの知見を総合すると、統合失調症の前駆期~初発期の臨界期に進行性脳病態が存在し、神経画像所見と対応すること、その背景に分子、遺伝子の異常が想定されることが明らかとなり、統合失調症の早期発見のための神経画像の臨床応用や、早期介入の分子標的の同定に向けて重要な基礎的知見をもたらした。
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