研究課題
ポリグルタミン病は遺伝子変異によって生じる異常ポリグルタミン病タンパク質が、様々な正常タンパクと結合して、転写、スプライシング、軸索輸送、シナプス伝達、ミトコンドリア膜電位など様々な細胞機能を障害する。しかし、この中で、どの機能異常が病態相互の比較の上で最重要なのかは明らかではない。一方で、変異タンパクが核内部に移行することが病態発現の上で必須であることが、複数のグループの実験結果から証明されている。私たちは、核内に移行した変異タンパクが如何なる核タンパクの機能障害をもたらすかを明らかにするために、Ataxin-1あるいはhuntingtinを発現する初代培養神経細胞(大脳、小脳、線条体)から抽出した可溶性核タンパクのプロテオーム解析を行い、結果として、複数疾患の病態に共通してDNA修復に必須なHMGBタンパクが減少すること、これに伴ってDNA損傷シグナルが神経細胞において亢進することを明らか明らかにした(Qi et al., Nature Cell Biology)。また、ショウジョウバエモデルにおいてHMGBタンパクを補正すると、変異ポリグルタミンタンパクによる複眼の神経変性を抑制できることを明らかにした。本研究においては、このDNA損傷修復障害仮説をさらに確かにすることを目的とした。その結果、インタラクトーム解析をきっかけにDNA損傷修復タンパクKu70がハンチントン病原因タンパクと結合すること、この結合によりDNA2重鎖切断修復が阻害されること、さらにKu70の補給が病態をin vivoレベルで改善することを示した(JCB in press)。これらの成果は、老化と同様にDNA損傷修復がポリグルタミン病の主要な病態として存在していることを示しており、また治療開発への指針を与えるものである。
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Journal of Cell Biology
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