研究課題
カルシニューリン(CN)の前脳特異的欠損マウスは統合失調症様行動異常を示す。本研究ではCNの関連分子の遺伝子改変マウスを複数系統入手し、網羅的行動解析を行なった。CNの関連分子として、α-Ca^<2+>/CaM依存性リン酸化酵素II(αCaMKII)、リアノジン受容体3型(RyR3)、神経型NO合成酵素(nNos)、Ca^<2+>/CaM依存性リン酸化酵素IVなどを対象として。RyR3欠損マウスは顕著な活動性の亢進、社会的行動の低下などの行動異常、そして潜在抑制の障害が見られた。nNOS欠損マウスでは活動性の亢進とうつ様行動の低下、作業記憶の低下が見られ、ドーパミンD1受容体のシグナルが活性化していることも明らかとなった。また、CaMKIV欠損マウスは参照記憶の障害や不安様行動の低下を示した。解析したマウスの中で最も顕著な精神疾患様の表現型を示したαCaMKIIヘテロ欠損マウスでは、作業記憶の顕著な障害、著しい攻撃性、活動性の亢進、不安様行動の低下がみられ、さらに活動性には2~3週間程度のゆっくりとした周期的な大きな波が認められた。これらの行動異常のパターンは統合失調症や双極性感情障害等の精神疾患にみられる症状とよく似ていた。さらに、このマウスの海馬の歯状回では、ほとんどの神経細胞は成熟段階まで達していないことを発見し、この現象を「未成熟歯状回」と名付けた。前脳特異的CN欠損マウスをはじめ、他の精神疾患様行動異常を示す複数の系統の遺伝子改変マウスでも「未成熟歯状回」と同様な現象が生じていることを示唆するデータを得ている。CNが統合失調症の有力な感受性遺伝子の一つであることや、「未成熟歯状回」の遺伝子・タンパク発現パターンがヒト精神疾患患者の死後脳のそれと似ていることなども考慮すると、「未成熟歯状回」と同様な現象がヒト統合失調症でも生じている可能性は高いと考えられる。
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