研究課題
ポリグルタミン(PolyQ)病は、原因蛋白質内のPolyQ鎖の異常伸長により発症する遺伝性神経変性疾患の総称で、異常伸長PolyQ鎖を持つ変異蛋白質がミスフォールディングを生じ、細胞レベル・個体レベルで様々な機能異常を来たし、最終的に神経変性を引き起こすと考えられている。本研究では、PolyQ病における個体レベルでの可逆性神経機能障害の分子メカニズムを解明し、神経症状に対する治療標的を特定することを目的とし、PolyQ病モデルショウジョウバエを用いたゲノムワイドな遺伝学的スクリーニングにより、神経機能障害に関わる遺伝子の同定を試みた。異常伸長PolyQ蛋白質を薬剤誘導性に神経系に発現して神経機能障害による運動障害・寿命短縮を来たすPolyQ病モデルショウジョウバエGS-ExPolyQ Flyに対し、昨年度は1次スクリーニングとして染色体部分欠失を持つショウジョウバエ変異体ライブラリーDef Fly(224系統)との遺伝学的交配を行い、次世代の寿命短縮が改善される11系統を同定した。今年度はこれらの部分欠失領域に遺伝子変異を持つショウジョウバエ変異体を用いた2次スクリーニングを行い、次世代の寿命短縮が改善される遺伝子変異として、Sup1、Sup5の2つの遺伝子を同定した。さらにいずれの遺伝子のRNAiノックダウンでも寿命短縮の改善を確認した。今後、Sup1、Sup5が関わるPolyQ病の可逆性神経機能障害の分子メカニズムの解明により、新たな対症治療法の開発につながることが期待される。
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