研究課題/領域番号 |
20023022
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
植田 弘師 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00145674)
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研究分担者 |
井上 誠 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (60380987)
藤田 亮介 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (70380855)
植田 睦美 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 研究支援員(科学研究) (30437834)
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キーワード | ストレス / コルチコステロン / MAP2 / アクチン / スパイン / Eph / プロサイモシンアルファー / BDNF |
研究概要 |
本研究は、ストレスにより生ずる精神・神経系に及ぼす変調を細胞及び個体レベルで可視化すると共に、その責任細胞や責任分子群を同定することで、新しい治療標的を見いだすことを目標としており、1. うつ病とストレス関連ホルモン、2. 脳虚血ストレスにおけるネクローシス抑制作用を有する保護分子プロサイモシンアルファー(ProT)、3. 神経回路可塑性を誘発する中毒性薬物について、個体レベルでの可視化とその治療標的の探索が課題である。第1の課題ではストレス関連ステロイドホルモン、コルチコステロン(Cort)によるMAP2を介する効果がチューブリンのみならずアクチンに対しても同様な効果を示し、神経細胞ではスパイン形成異常を示した。特にCortにより成熟型のスパインの数の減少が観察され、シナプス機能低下が樹状突起とスパインの両者の形態異常で説明されうることを明らかにした。様々な精神神経作用薬の中にもMAP2を分子標的とする物質が存在することを見出し、薬物評価の新しい視点を与えることができた。第2の課題に対して、ProTは虚血ストレス時に生ずるアポトーシスも抑制することとそのメカニズムにBDNF産生とミクログリア活性化が関与することを明らかにした。同様な現象は網膜虚血モデルでも確認できた。このシステムではProTのアンチセンスや吸収抗体処置によって虚血障害の増悪作用が観察され、生理的な保護機能があることが推測された。第3の課題は、麻薬依存ストレス変調について、アンチオピオイドNMDA受容体仮説を裏付ける数々の事実を発見した。一つはトラシスクテイベーションすることでNMDA受容体を活性化するEph遺伝子欠損マウスにおける依存形成消失、NR2A発現誘導することが知られているBDNFについてモルヒネ耐性・依存時に発現増加することを明らかにし、その吸収抗体による耐性形成能消失を見出し、さらにはBDNFのエピジェノミック発現調節を阻害するクルクミンによる耐性形成抑制の発見である。
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