背景 : マイクロアレーの解析技術の進展で、これまで未発見の精神神経疾患関連・関連遺伝子単離が可能となると期待されている。 研究目的 : 本研究は、機能性精神神経疾患および精神遅滞関連症候群を対象とし、ゲノムブロック異常(重複や欠失に代表されるゲノム微細構造異常)に焦点をあて、高精度ゲノムマイクロアレーを用いて網羅的に検出・カタログ化し、精神神経疾患素因・感受性遺伝子の同定と発症機序の解明を行うことを目的とする。本年度は新たな解析対象として自閉症を加える。 結果 : [症例集積状況]統合失調症については60例の4.2Kアレー解析が終了した。精神発達遅滞症例も150例は集積済みで、中間表現型(付随する症状や合併症)を基に選択してAffymetrix SNP6.0(または250K)あるいはNimbleGen385Kの解析を開始している。20年度から新たに解析対象とした自閉症に関しては大阪大学医学研究科精神医学・橋本亮太先生の研究協力を得て、35例を既に集積した。症例集積は研究全期間を通じて継続する。 [ゲノム異常の同定と検証]自閉症25症例におけるAffymetrix社SNP6.0(185万オリゴDNAを全ゲノムに配置)を用いたCNV解析を行った。異常検出部位は患者細胞ペレットと当該クローンDNAを用いてFISH、あるいはゲノムDNAを用いて定量PCRで欠失や重複を検証予定である。 [精神遅滞症候群における責任遺伝子単離]新生児期から治療抵抗性の難治性けいれんと発達遅滞を呈する大田原症候群の責任遺伝子STXBP1を単離し、Nat Genetに発表した。この知見は、シナプス小胞の不具合による新たなてんかん発症機序を示した点で重要である。 考察 : 本年度より新たに解析対象とした自閉症症例の解析が進行中である。多数のCNVが検出されており、その病的意義の検証を行っていく必要がある。精神遅滞を伴う大田原症候群の責任遺伝子の単離に成功し、精神神経疾患のCNVを含むゲノム構造解析の有効性が明らかとなった。
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