背景:マイクロアレーの解析技術の進展で、これまで未発見の精神神経疾患関連・関連遺伝子単離が可能となると期待されている。 研究目的:本研究は、機能性精神神経疾患および精神遅滞関連症候群を対象とし、ゲノムブロック異常(重複や欠失に代表されるゲノム微細構造異常)に焦点をあて、高精度ゲノムマイクロアレーを用いて網羅的に検出・カタログ化し、精神神経疾患素因・感受性遺伝子の同定と発症機序の解明を行うことを目的とする。新たな対象疾患に自閉症を加えた。 結果:[症例集積状況]20年度から新たに解析対象とした自閉症に関しては大阪大学医学研究科精神医学・橋本亮太先生の研究協力を得て、35例を既に集積した。 [ゲノム異常の同定と検証]自閉症35症例におけるAffymetrix社SNP6.0(185万オリゴDNAを全ゲノムに配置)を用いたCNV解析を行った。異常検出部位は患者細胞ペレットと当該クローンDNAを用いてFISH、あるいはゲノムDNAを用いて定量PCRで欠失や重複の検証を行っている。 [精神遅滞症候群における責任遺伝子単離]West症候群の新規責任遺伝子EIEE2(仮称)の単離に成功した(論文投稿中)。EIEE2もSTXBP1と同様チャネルや受容体とは全く異なる分子で、てんかんの発症機構として極めてユニークな発症機構が疑われた。 考察:新たに解析対象とした自閉症症例の解析が進行中である。多数のCNVが検出されており、その病的意義の検証を行っていく必要がある。West症候群の新しい責任遺伝子の単離に成功し、精神神経疾患のCNVを含むゲノム構造解析の有効性が明らかとなった。
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