研究課題
ネプリライシン(NEP)活性低下モデルマウス脳の神経病理を解析し、アルツハイマー病(AD)病理との類似点について検討した。NEP遺伝子を欠損したアミロイド前駆体蛋白質トランスジェニックマウス(NEP-KO×APPtg)脳ではAPPtgマウス脳に比較して加齢依存的に3pyroE型Aβの形成と蓄積が加速し、ヒトと類似するアミロイド病理を示した。NEP-KO×APP tgマウスにさらにアミノペプチダーゼ(AP)A-KOマウスを掛け合わせると、3pyroE型Aβの蓄積が30%抑制されることも明らかになった。また、NEP-KO×APP tg脳ではAPP tg脳に比較して、APNやDPP4の発現量が1.5~2倍近く上昇し、グルタミン酸の環化を触媒するグルタミニルシクラーゼ(QC)の発現量は4倍ほど増加し、上述のペプチダーゼの発現増加量を大きく上まわった。このように、3pyroE型Aβの産生はNEP依存的なAβの生理的分解経路が遮断された場合に促進し、AP/ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)やQCが関与する副経路を介して生じると推察される。QCはアストロサイトに局在することから、炎症過程や細胞の保護・修復等に関わる酵素であると考えられるので、脳内にカイニン酸を注入して炎症反応を惹起させると、QCタンパク量は野生型マウスで10倍、NEP-KOマウスで18倍増加した。同様に、APP tgマウス脳ヘカイニン酸を注入すると3pyroE型Aβの形成が促進することも明らかとなった。これらの結果は、NEP活性の低下は炎症応答の亢進を介してQC発現を増強することを示唆する。このように、アミロイド蓄積によって惹起された炎症反応はQC発現を増強し、NEPの活性低下はアミロイドの蓄積および炎症反応の惹起を異なる作用点で増強し、結果的に3pyroE型Aβの形成と蓄積を進行させると考えられる。
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