これまでに溶媒中で単分散した状態にあるGM1に関してはNMR法を用いた構造解析が多数報告されているが、水溶液中でミセルを形成している状態のGM1の構造解析はほとんどなされていなかった。そこで、本年度では、超高磁場NMR計測を行い、水溶液中で60kDaのミセルを形成するlyso-GM1に関してNMRシグナルの帰属を確立した。そして、NOEデータに基づく距離情報を制限項として分子動力学計算を行うことにより、lyso-GM1の糖鎖部分のコンフォメーションを決定した。さらに飽和移動実験の結果から、GM1糖鎖のGalNAcIIIのNH基は糖鎖構造の内側を向いており、NeuAcのNH基は外側に露出していることを明らかとし、NOEデータに基づいて導いた立体構造を裏付けた。 このミセルにAbetaを添加した結果、脂質頭部に由来するシグナルに選択的な化学シフト変化が観測された。また、部位特異的変異導入と化学修飾を利用してAbetaのC末端をスピンラベル化し、常磁性効果を利用したNMR解析を行った。その結果、lyso-GM1の脂質頭部に加えて糖鎖の還元末端に位置するGlc^IやGal^<II>に由来するシグナルに緩和の促進がみとめられた。以上の結果から、Abetaはlyso-GM1ミセルの糖鎖と脂質の境界部に結合していることが明らかとなった。
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