研究課題
背景 : 嗜銀顆粒性認知症(DG)は病理学的に提出された概念であり、アルツハイマー病(AD)との鑑別が困難であるとの報告はあるが、臨床診断基準は全く定まっていない。方法 : 高齢者ブレインバンクに登録されたDG例を、神経病理学的に検討し、ADとの差に注目し検討した。特に、萎縮中心として、DGでこれまで経験した側頭葉内側面前方の強調、及び、ADには少ない左右差を、嗜銀顆粒の出現ではほとんどの症例で認める経験を元に、病理学的に詳細に検討した。高齢者ブレインバンク嗜銀顆粒ステージIIIの症例を抽出し、嗜銀顆粒の扁桃核における密度の半定量評価と、外側膝状体に面した海馬レベルでの嗜銀顆粒の側方への伸展程度のふたつのパラメータを以って、いずれかがグレード1以上の左右差がある場合、左右差ありと判断した。形態・機能画像は、複数の検索者が複数の機会に盲目的に左右差を検討することで行った。結果 : DGは、側頭葉内側面前方の萎縮が強調されるのに比し、外側並びにコンベクシティーは保たれること、進行のスピードが遅いことが明らかとなった。また、神経病理学的左右差は80%の症例で認められた。機能画像を撮像した全例で左右差を認め、病理学的左右差と一致していた。また、形態画像が撮像された例では8割に左右差が認められ、この左右差と病理学的左右差は全く一致していた。考察・結語 : DGは、側頭葉内側面前方の限局性萎縮に、左右差を伴う特徴を加えることで、画像診断がかなりの特異度・感度でもって可能であることが示された。神経病理学的左右差と形態画像の左右差の頻度が一致し、機能画像では全例左右差を認めた点は、機能的異常が形態的異常に先行することを示唆する所見と考えた。今後さらに症例を増やし、検討していく予定である。
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http://www.mci.gr.jp/BrainBank/