研究課題
本年度は、認知症等、神経変性疾患の原因と考えられるタンパク質の異常凝集のメカニズムについて、αシヌクレインの試験管内モデルを用いて明らかにした。またその根本治療法や治療薬として最近注目を集めている低分子化合物のタンパク凝集抑制効果について、特異抗体を用いた方法や生化学解析からその分子作用機序を明らかにした。αsynはパーキンソン病(PD)やレビー小体病患者脳に蓄積するタンパク質であるが、明瞭な構造をとらないnatively unfbld edproteinの一種とされている。αsynのN末端からC末端まで、約10アミノ酸ごとのペプチドを抗原にして作製した特異抗体を用いてその構造変化を解析した結果、αsynは溶液中である程度の構造をとっていること、線維化することによりその構造が大きく変化することを明らかとなった。また、凝集阻害効果を有する低分子化合物を添加すると化合物と結合したモノマーや二量体が形成されるが、それらはモノマーと線維のちょうど中間的な構造を示すことを抗体を用いた解析から示された。この結果は低分子凝集阻害薬が結合したαsynモノマーや二量体は線維形成のon-pathwayの中間体であり、阻害薬は構造変化したモノマーや二量体に作用して線維形成を抑制することを意味する。家族性PDに発見されたA30P変異を導入したαsynは、野生型αsynとは性質が異なる断片化しやすい線維を形成することを見いだした。このA30P線維を鋳型に野生型αsynを線維化すると、野生型ではなく、A30P型の性質を有する線維が形成される。逆に野生型αsyn線維を鋳型にA30P αsynを線維化しても、A30P線維の構造と性質を有する線維が形成されることが判明した。以上の結果から、線維化したタンパク質の構造の違いが変性疾患の多様な病理、病態となって現れる可能性が考えられる。
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