研究課題
本研究は、「素粒子物理学における準備理論」の背後にあると目される「超対称模型」の精密検証を行うことを目的として遂行された。本研究の特色は、カイラル対称性を持つ格子QCD形式を用いて、その形式が持つ利点を最大限活用できる物理量に着目し、これまでにない精度の高い結果を導くことにあった。その結果、主なものとして以下のような成果挙げるに至った。1. 中性K中間子の混合パラメーターの計算 :一般に超対称模型は"CPの破れ"の源を多く含む。一方で標準理論では破れは小さい。従って、CPが破れているような物理プロセスを精密に調べることにより超対称模型の効果を検証することができる。その代表的な例が中性K中間子の崩壊であり、検証に必要な非摂動な混合パラメーターを8%の精度で決定した。2. Nucleon-sigma termと核子中のストレンジネスの含有量 :Neutralinoをダークマターとして含む超対称模型は、神岡にあるような大型の水槽を使った観測を通して探索することができる。ここで、ダークマターと核子の相互作用の強さが重要な役割を果たすが、この強さを計算した。上記の何れの物理量もカイラル対称性を持たない格子形式で計算された結果を格段に改善し、超対称模型の探索に大きなインパクトを与えるものである。物理的体積が十分に大きいとは言えない点、3-フレーバーを2-フレーバーで近似している点から、まだ我々の結果は未だ最終結果とは言えないが、今後の同様の計算に対し道筋を与えた点で非常に大きな成果と言える。
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Phys. Rev. D 77
ページ: 094503
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http://www.kek.jp/newskek/2008/novdec/SSBD.html